大変お待たせしました。去る12月13日、とうとうcirce初のフルアルバムの音源が完成いたしました。
9月のjuno studioでのレコーディングから早3ヶ月。思えばこの3ヶ月間ひと時もアルバムが頭から離れた時はありません。そして費やした時間に報いる作品ができました。
以下、juno Recording日記<完結編>としてご報告いたします!!!

前回の11月24日ミックスの翌日、25日に
『Girl』、
『juno-session(仮)』、
『ゴッホの耳』をミックスしました。
『Girl』はマリンバの連弾とクラシックギター、クラリネットが入ってます。ドラムがなく全体的な音量は小さめ。これまでと明らかに違うミックスでした。誰が言ったか、「暖炉を囲んでいて外は雪が降っている。テーブルにはシチュー。」というコンセプトでミックスしました。
『juno-session(仮)』にもドラムがなく、ギターも電池駆動のミニアンプを使ったので、いい意味でちゃちく感じるミックスを目指しました。ちなみ即興した時からなぜか宇宙的なイメージのこの曲。後々調べてみたら「Juno」というのは衛星の名前だそうです。いい感じの偶然がありました。
そして『ゴッホの耳』。もしかしたら、アルバムの中で一番難航したのはこの曲だったかも知れません。この日のミックスは、基本モノラルで、部分部分でパンに振り分けていく構成。そしてマリンバにエフェクトをかけた攻めのミックスです。伊藤さんがミックスするんだから、間違いなくかっこ良く、完成度も保たれていました。
しかしこの日持ち帰って以降、ゴッホをどうするのか悩み抜きました。ミックスは間違いなくかっこ良い。他の曲にない斬新さがある。だけどこのテイクの持ち味を最大限に活かしてるのか。juno studioでファーストテイクをOKにした時のピンと来た感覚に戻ろう、と3人でとことん話し抜きました。
そして、12月13日の最終ミックスに臨むことになったのです。

12月13日当日。ここに来て、ゴッホにまさかのオーバーダビングとなりました。circe必殺のアイテム、テレコが火を噴きます。そして再ミックスへ。
ゴッホに対する僕らが出した答えは「太さ」です。あの時ファーストテイクを良しとしたのは、他のテイクに比べて音が太く、原始的なパワーを感じたからです。ドラムの皮の鳴り、全体を覆いつくすようなギター。それらを最大限に活かすミックスを目指しました。
そして出来上がる新生ゴッホ!!演奏のしくじりやリズムのよれそのままに、「このテイクにしよう」と言った時の感覚が蘇るミックスとなりました。ミラクルエンジニア炸裂!!

そして作業はマスタリングへ。レコーディングの最終章です。
マスタリングは各曲の音量バランスを整えるとともに、全体的な質感を決めていきます。今回はミックスを最大限に活かすため、あえてマスタリングで大幅な処理はしません。
いわゆるロック的なアルバムだと、音を張り付けるようなマスタリングをする場合があります。(すべての楽器の音量を限界まで引き上げているので、音が張り付いてる印象になります)。ビートは強調されるけど、演奏で弱く弾いたとこも強く弾いたとこも全部同じく聞こえてしまいます。
伊藤さんはcirceの音楽性を考えて、弱く弾いたとこは弱く、強く弾いたとこは強く聞こえる「ダイナミックレンジ」の広い音作りをしてくれました。つまり曲の中での演奏による音量差です。ロックのアルバムというよりは、クラシックやジャズに近いイメージ。今アルバムの音作りの最大のキモがこれです。
さらに、真空管を通すことによって暖かさや豊かさが加わり、最上の完成度でマスタリング終了となりました。

そして最後の最後、曲間の秒数や曲名の編集をして、いよいよアルバム完成。
感慨深い一瞬。
ノンEQ、ノンコンプの『Bird』も、回数間違った『Memento mori』も、ドはまりした『Love』も、スネアを叩き忘れた『浮遊』も、ファーストテイクの『ゴッホの耳』も、連弾の『Girl』も、即興の『juno』も、バラ録りのあの曲も、そしてほとんど人生を賭けたリードトラックも、全てが詰まったアルバムが出来上がりました。
これからジャケットを決めたり、プロモーションを考えたり、ツアー組んだり、より一層忙しくなると思いますが、とにかく音楽作品としては完成です。あらゆる関係者に感謝しなくてはいけませんが、何よりもエンジニアの伊藤さん、本当に本当にありがとうございます。

「人が感動できる音楽を作る」、苦しい時も、楽しい時も常に僕らのそばにあった言葉です。そんなすごいアルバムが作れたのかは、まだわかりません。多分一生わからないけど、そこに向かう気持ちは貫いた。
皆さんのとこまでお届け出来るまでもう少し。待っててください。circe一同
アルバムレコーディング写真UP中!!